酒造好適米の玄米形状(7)

玄米形状(五百万石).jpg回帰分析(五百万石).jpg 酒造好適米品種の玄米形状(粒長×粒幅:L*W)と千粒重との関係を(5)では山形県産「出羽燦々」、(6)では兵庫県産「山田錦」について述べた。(7)では富山県産「五百万石」について述べよう。解析手法は前回と同様である。
 ① (L*W)と玄米千粒重の関係について回帰分析を行った。回帰式の当てはめの良さを示すR2は0.225~0.647で、出羽燦々、山田錦より低かった。年次別の 回帰係数に有意差はなく、定数に有意差があることから、回帰係数は共通の4本の回帰式が得られた。この関係は、出羽燦々、山田錦と同様であった。
 ② 回帰係数の大きさは、出羽燦々(2.15)>山田錦(1.72)>五百万石(1.52)であった。
 ③ (L*W)の大きさは上図から平30(赤)>平29(青)>令2(緑)>令1(黒)年産の順であった。一方、粒長、粒幅が決定される登熟初期(出穂後15日間:8月1~15日)の平均気温(アメダスによる)は令1(28.9℃)>令2(27.3℃)>平30(27.0℃)>平29(26.1℃)の順に高かった。令1年産の(L*W)が小さかったのは、粒長や粒幅がモミがらの大きさで抑制されたというよりは、高気温で抑制されたのでないかと推察される。同様の結果は三浦ら(日作東北支部報No.63 2020)が秋田県産「あきたこまち」で報告している。
 以上から、酒造好適米品種の玄米形状(粒長×粒幅)と玄米千粒重との回帰分析の結果は「出羽燦々」、「山田錦」、「五百万石」の3品種とも同様であった。これらの結果は、大粒化、高品質酒米生産のための知見となろう。

 

 


 

2021年2月 1日 10:31