酒造好適米"胴割れ粒"発生に注意(2)

グラフ.jpg 高温処理と胴割れ率.jpg

                            処理温度:昼35℃/夜25℃

     (出典:長田健二ら:登熟初期の気温が米粒の胴割れ発生に及ぼす影響:日作紀:73-3)

 登熟初期の高温が胴割れ粒発生を助長することを明らかにした長田らの論文を引用し、本年産酒造好適米品種の胴割れ発生にあらためて注意を喚起したい。
 ①米の胴割れは、登熟が進み籾含水率が低下して硬度が増した米粒が、気象条件や乾燥調製等による吸水や放湿のため、内部水分分布の不均衡を生じ、米粒内での膨縮差が大きくなることによって発生する(長門ら)。
 ②胴割れ米を発生助長する要因は、登熟全般の高温条件、籾含水率の低い条件での降雨、収穫日前後の複雑な気象条件、乾燥調製条件など、登熟後期以降の籾含水率の低下と籾内の急激な水分の変化によるとされてきた。
 ③胴割れ発生に対する以上の知見に対し、長田らは、出穂後10日間という登熟初期の気温、とくに日最高気温が高いほど胴割れ率が増える傾向を認めた。また、開花後6-10日の期間に高温処理を行うと胴割れが著しく増加した。
 ④登熟初期の気温がなぜ胴割れに影響するのか。胴割れ発生に強く影響する開花後6-10日頃の時期はもみ殻の中にある若い頴花の粒長方向への伸長がほぼ終わり、粒幅、粒厚方向へと肥大が盛んとなって、粒重が急激な増加を開始する生育ステージに相当し、頴花の内部では、胚乳部の細胞分裂が続いていると同時にデンプン蓄積を開始している状態である(長門ら)。このような登熟初期の生育ステージで高温条件になると、発育速度の増加の程度が大きくなる。
 ⑤このことから、高温条件により、急激な頴花生長が生じることで米粒内部に胚乳構造やデンプン蓄積特性などに影響を及ぼし、胴割れが生じやすい米質になっているのでないか、と推察している。

2019年8月13日 13:57