人と風土が育む山形の酒米(2)

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精米による成分の変化  高度精米による砕粒

③ タンパク質含有率 :米中のタンパク質は酒造りに大きく影響する要因の一つで、酒米は低タンパク質であることが求められる。タンパク質含有率が高いと白米の吸水性は低下し、蒸米の消化性(蒸米をデンプンやタンパク質分解酵素で消化させた場合の消化速度や消化量のこと)も悪くなる。また、清酒中のアミノ酸度(清酒の味を構成するアミノ酸の量のこと。アミノ酸が多いと雑味の多い飲みにくい酒になる)も高くなり、貯蔵や日光の照射により着色しやすく雑味が多くなる。米のタンパク質顆粒は糊紛層や外周部に多いので、高精米にするほどタンパク質含有率は低下する(上図)。コストと手間をかけて高精米するのも、雑味を極力除きたいためである。タンパク質含有率は、玄米で6~7%、精米で(精米歩合75%)5~6%が適当とされている。
 タンパク質含有率は、品種特性、土質によって多少の差があるが、栽培法によって大きく影響される。とくに、施肥量の多少や施肥時期によって変動し、施肥量が多いほど高まる。
④ 精米特性 :精米することを、現場では米を磨くという。精米後の米はまるで真珠のように白い。米の胚芽や外層部にはタンパク質、脂肪、灰分、ビタミンなどが含まれている。これらの成分は麹菌や酵母の生育を急進させ、酒質のバランスを崩し、着色や雑味のもとになる。吟醸酒のような香りが高く、味がキレイな高級酒を製造するには、アミノ酸の原因物質のタンパク質、酵母の香りの生成を邪魔する脂肪を入念な高精米によって取り除く必要がある。
 高精米時に米が砕けると、米の外層部の成分が残存し、粒が不均一になるため、その後の工程に影響する。歩留まりも低下する。
 さて、酒造りに適した酒造好適米と呼ばれる酒米品種、どのような背景の下で生まれたのであろうか。銘酒の原料米として蔵元や米の作り手から愛されている那辺はどこにあるのだろうか。本シリーズ次回からは、人と風土が育て上げてきた山形の酒米を語ろう(以下、次号)。 

2021年11月 8日 14:23