本年産、酒造好適米品種の千粒重の特徴

玄米形状と千粒重.jpg
日照時間と千粒重.jpg
 県内産酒造好適米品種の品質調査の結果、いずれの産地も玄米千粒重が小さいことがわかりました。金山酒米研究会の出羽燦々は平均で平年より1.1g、新庄指きりげんまんの出羽燦々は0.8g、かほく酒米研究会の山酒4号は1.6g低下しています。本年産の酒造好適米品種の千粒重が小さい要因は?。
 それを知るため、サタケの穀粒判別器(醸造用)による玄米の長さ、幅と玄米千粒重との関係を見たのが上の図です。これによれば、令2年産(図中黒丸)は平29~平1年産より玄米長、幅ともに小さいことがわかります。すなわち、令2年産は玄米の長さ、幅が小さく、その結果として千粒重が小さくなったと推察されます。玄米の長さと幅の大きさは、もみ殻の長さと幅の大きさに規制さることはもちろんです。もみ長×幅がもみ殻の大きさを表すとすれば、玄米千粒重が小さくなったのはとりもなおさずもみ殻が小さく形成されたためと考えてよいでしょう。
 もみ殻が小さく形成される理由を松島省三は「稲作の理論と技術」で詳細に述べています。引用しましょう。「玄米の大きさはもみ殻の大きさによって一次的に決定されるが、このもみ殻の大きさは出穂期までに決まり、出穂後にはこの決まった大きさのもみ殻の内容積をどの程度に胚乳が充満するかによって、二次的に玄米の大きさが決定されると見てよい。右下の図は出穂期前15日間に8種類の遮光処理をし、光の強さともみ殻の大きさと玄米大きさとの3者の関係をを示したものである。図中数字は大きいものほど光の弱いことを示しているのから、光が弱まるにしたがって、明瞭にもみ殻が小さくなり、これに応じて規則正しく玄米の大きさが小さくなっていることが認められる。もみ殻が小さく形成される理由としては内外頴の生成時における稲体内特に幼穂部の炭水化物の不足が主な原因であろう。すなわち、もみ殻の最も小さくなりやすい時期は減数分裂期であるが、頴花の縦生長および横生長の最も盛んな時期であり、この間の栄養不良が頴花の生長を阻害する。遮光処理は炭水化物の減少や転流阻害を引き起こしもみ殻を小さく形成した」。
 遮光処理実験がもみ殻を小さく形成するという結果は、実際の場面では頴花発育期間の寡照条件に当てはまります。金山町の令2年7月の日照時間が上表です。赤字は対平年比です。これによれば、出穂前30日間の頴花形成期の日照時間が極めて少なく経過したことがわかります。
 以上から、令2年産の酒造好適米品種の千粒重がいずれの産地においても小さいのは、7月の記録的な日照不足によるものとみてよいでしょう。加えて、6月の多照で穂数が多くなり、その結果、県内の4地域ともに全モミ数が多い(東北農政局)ことも千粒重が小さくなった要因の一つかもしれません。

2020年12月10日 11:58