酒造好適米の玄米形状(5)

玄米長さ*幅と千粒重.png回帰係数.jpg 本年産酒造好適米の品質調査は終盤を迎えています。アスク品質調査室がサタケ穀粒判別器(醸造用)を導入して4年目、本器で測定した玄米形状(玄米長・幅・厚み)のデータが積み重なり、いくつかの知見が得られています。今回の紹介するのは、JA金山酒米研究会の「出羽燦々」の玄米の長さ*幅と千粒重との関係です。
  ①酒造好適米の特徴の一つが大粒で粒張りが良いことにある。米粒は扁平楕円体の形状をしており、最大径(長軸)を長さⅬ、中間径(中軸)を幅W、最小径(短軸)を厚さTと呼び、それら3つの寸法を3軸寸法という。(L*W*T)は米粒の大きさを表す指標であり、米粒の重さは通常千粒当たりの重さで表す。粒の大きさと重さは共に品種の特性であるが、栽培・気象条件によって変動する。
 ②玄米千粒重は出穂前30日頃の幼穂形成期から出穂後40日頃の登熟後期までの長期間にわたって決定される。このため、千粒重の大きさは、出穂前に決まるもみ数、もみ殻の大きさ、そして出穂後は形成されたもみ殻に蓄積するでんぷん量で決定される。
 ③玄米の成長は、基本的には開花受精すると、子房はもみの縦方向に伸び始め、約7日ほどで内頴の先端部まで達し、このとき玄米の長さが決まる。子房が伸びると同時に幅も増していくが、縦方向の伸びよりも遅く、もみ殻いっぱいの幅になるのは開花後14日ころである。玄米の厚さが決まるのは、開花後20日ころである(作物学の基礎:農文協)
 ④玄米の長さと幅はもみ殻の大きさで一次的に決定される(松島)ことから玄米の長さと幅の積(L*W)は、もみ殻の大きさを表す指標と考えられる。
 ⑤そこで、もみ殻の大きさの指標であるL*Wと玄米千粒重との関係について調査解析を行った。調査サンプルは山形県金山町産の「出羽燦々」(平29年~令2年)、兵庫県T町産「山田錦」(平29~令2年)である。ここでは「出羽燦々」の結果について以下述べる。
 ⑥(L*W)と玄米千粒重との関係が上図である。回帰式を当てはめると、4年間ともR2(回帰式の当てはまりの良さを表す)は0.8(相関係数=0.9)と高い値を示した。また、回帰分析の結果(分散分析表)では、回帰係数に有意差はなく共通の一つ係数で表される。すなわち、L*Wの単位増加量当たりに対する千粒重の増加量には年次間の差はみられないことを示している。一方、回帰定数には有意差があることから、共通の回帰式を当てはめることはできず、表の下に示したように年次別にそれぞれ4本の回帰式で表される。
 ⑦以上の結果は、グラフの数値範囲内では4年間とも千粒重の増加量は1g/0.5mm2と一定であり、年次間には有意差は認められずず、千粒重はもみ殻の大きさに規制されることを示している。 
 ⑧令2年の気象経過をみると、幼穂形成期間全般に渡って(7月)日照不足が続いている。令1年は7月2~3半旬の最低気温が10~13℃まで低下した。すなわち、両年のこの気象経過がもみ殻の形成を小さくしたのでないか推察される。さらに、1年は全もみ数が平年比106と多かった(東北農政局)ことももみ殻が小さく形成された要因の一つでないか。
 ⑥もみ殻の大きさは調査をしていないため、以上の知見は(L*W)の大きさからの推察である。次回は「山田錦」の結果を述べよう。
 
 

ううう

2020年12月29日 10:52