酒米品種の千粒重・心白発現率に及ぼす気温の影響(2)

金山気温と千粒重jpg.jpg図2 出穂前11~30日間の最低気温と千粒重の関係(金山町:出羽燦々 山形県水田農試データ引用)


 2 出穂前気温と玄米千粒重との関係

 金山町令1年産の出羽燦々の品質の特徴は、玄米の厚みは大であったものの粒長、粒幅が小いため千粒重は平均26gと小さかったことである。令1年の出羽燦々の出穂後の平均気温は平年より高めで経過したが、出穂後11~20日間の平均気温は26℃でアスク試験田より2℃ほど低かった。このことから金山ではこの期間の気温が玄米の肥大に大きく影響したとはみられない。さらに検討すると、出穂が7月26日頃と早まったものが25g台と小さい傾向にあった。
 千粒重は、第1義的にはもみの大きさで決定される。そこで、モミの大きさに影響する幼穂形成期から穂孕期間の最低気温と千粒重との関係を調査した。令1年7月8日~11日に金山の最低気温は10.6~12.9℃まで低下している。
 出羽燦々の千粒重、出穂期は、山形県水田農業試験場が設置している酒米品種選抜の育種圃場(金山町上台)で調査したデータを引用した。供試年次は平7(1995)~令1(2019)の25年間、最低気温はアメダス(金山)による。出穂前11~30日間の日最低気温と玄米千粒重との関係が図2である。図2からは、出穂前11~30日の幼穂形成期から穂孕期にかけてのモミが生長する期間に最低気温が低かった年の千粒重は小さく(平15年:15.9℃、24.4g)、最低気温が高かった年は千粒重が大きく(平20:19.9℃、27.6g、平23:19.7℃、27.6g)、両者は高い正の相関関係にあることがわかる。すなわち、図2は金山町産出羽燦々の千粒重の大小は、出穂前の気温から比較的に高い精度で推定できることを示している。
 以上(1)、(2)の知見から、酒米品種出羽燦々の千粒重は、平たん部では出穂後の気温で、中山間部では出穂前の最低気温で推定できるであろう。
 注:低温は同化作用を直接阻害するのではないが、養分吸収および転流等の生理作用を阻害し、この結果、間接的に同化作用を低下させる。その結果、頴花の生成時における稲体内とくに幼穂部の炭水化物が不足し、頴花の縦生長および横生長、枝梗の生長を阻害する。また、枝梗とともに頴花が退化し、他方では退化を免れた頴花が小さく形成される(松島:稲作の理論と技術 養賢堂)。

2020年3月17日 11:42