幻になりつつある泰西農学第1号

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   塩水選作業をアスク社員体験

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 わが国の農業技術のうち、最も長命で現在まで普及している技術は、と問われれば、その答えは”塩水選”でしょう。「百年をみつめ21世紀を考える」(農林水産技術情報協会 1993)を引用しよう。福岡県農業試験場の正面玄関に向かって左手に塩水選の記念碑が建っている。今も日本中の農家が稲麦などの播種前に実施しているこの作業は明治15年福岡県勧業試験場であった横井時敬によって考案された。従来の風選や水選に代え,塩水を用い、充実した種子だけを比重選するこほ方法は、英国サイレンスタア農学校ノ教師チャアチ氏ノ(小麦に関する)試験説にヒントを得た、泰西農学導入の成果第1号の技術である」。
 4月1日、この指とまれの平吹正直さんが例年どおりタネもみの塩水選を行いました。酒造好適米品種「羽州誉」、「龍の落とし子」、「改良信交」、「酒未来」の原種生産用の種子です。これらのタネもみは、昨年アスク試験田に社員が田植えから収穫・調製までを手作業で生産したもので、充実していないモミや粃も混入しています。このため良く稔ったモミを選ぶ塩水選は欠かせない作業です。
 ところで、140年近く脈々と受け継がれて、早春の風物詩でもあった塩水選の風景は消え、幻の技術となりつつあります。近年の種子調製施設には比重選別機などの高度で大型の機械が導入され、農家が購入する種子は塩水選を必要としないほど充実しているからです。
 今、スマート農業が次世代の米づくりを担う技術として注目を浴びています。でも、新たな技術革新を迎えても、”良いタネもみを選ぶ””、この基本は米づくりの不易なるものでしょう。アスクの若手社員も「百聞は一見に如かず」、塩水選の作業をしっかりと目に焼き付けました。 

2020年3月30日 13:20