品質調査用玄米サンプルの採取に当たって

圃場別タンパク.jpg分散有意差検定.jpg 

 30年酒造好適米の品質調査はほぼ終了し、一息ついている所です。調査したデータは県内外の生産者、蔵元で活用されるものと思っています。
 アスクに送られてくる品質調査用のサンプルはそのほとんどが一生産者一サンプルです。通常、生産現場では、生産者は複数の圃場に作付し、サンプルは、刈り取り時や調製時に200gほど採取する場合が多いと推察されます。
 そこで、この指とまれの生産者(A,B,C)が酒造好適米品種「酒未来」のサンプルを作付圃場ごとに採取し調査した事例を紹介しましょう。上図にはA,B,Cの平成29、30年産の圃場ごとの玄米タンパク質含有量を示しています。
 生産者Aでは、29年産が最高7.7%、最低6.9%、平均7.4%、30年産では最高7.2%、最低6.8%、平均7.0%で圃場間にはバラツキがあり一様ではありません。もし、A,B,Cの間で圃場間のバラツキ、すなわち統計用語で言う分散に有意差がなければ、一点のサンプルの調査結果でお互いの比較は可能でしょう。統計的手法で分散の違いを検定した結果は次の通り。
①29年産は、千粒重、整粒歩合、心白率、タンパク質含有量とも分散の違いは有意ではなく、圃場間の分散は生産者間で異ならない。
②30年産は、千粒重、心白率は有意差なく、整粒歩合、タンパク質含有量で有意差が見られた。すなわち、品種特性である前者の特性は圃場間の分散はA~Cで異なっているとは言えず、栽培条件で左右されやすい後者の特性の分散は有意と判定され、A~Cで異なっていると言える。
 このことから、個別でサンプルを採取するにに当たっては、生育状況の観察に基づいて複数のサンプルを区分しておくなどでより確かな調査が可能になるでしょう。


 

2019年2月 5日 14:27