インドハリアナ州のあぜ道から(6)

 

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サットパル氏、担当農家(4名)らと対応策について打ち合わせ

  対応策の基本は、次の2点であることを提案。
 第1点が苗代に水を溜め、漏水を防ぎ苗を保温すること。それには古ビニールシートを畦畔脇に30㎝ほど埋め込む。
 第2点が尿素の追肥を施用し生育を促進すること。
 現地の農家は冬季に米づくりをした経験はないという。小麦の収穫後のバスマティ栽培は雨季のもっとも暑い時期に入ります。代掻きした水苗代にタネを播けば、短期間で芽がでるでしょう。”水で苗を保温する”、という考えが思い浮かばないのも蓋し当然かもしれません。
 帰国後に送られてきたメールの写真からは、これらの提案は実行されたことがわかります。苗の緑は濃くなり、生育は回復してきたようです。あとは何時田植えするかの連絡を待つばかりです。
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畦畔にはビニールシートを埋め漏水防止、水がたまっている (1月29日)
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苗の生育は回復しつつあり、あとは田植えをまつばかり 

 でも気になる点があります。それは地下300mからくみ上げる水には塩分が含まれていないのか、もし含まれているとすれば、その水が灌漑される田んぼの土にも。そこで持ち帰った田んぼの土のPHとCEC(陽イオン交換容量)、地下水のPHを測定しました。その結果によれば、土のPH8.3、CEC8.1、水のPHは8.3で、土、水ともPHはいずれも高くアルカリ性です。サットパル氏は水、土ともにPHは7.0だから問題はないと言っていましたが。ちなみに山形県の田んぼの土のPHは5.5~6.0、CECは20以上です。CECは土の地力、保肥力の高さの指標になりますが、この数字からは地力は低いと言えるでしょう。
 地下水灌漑は、チューブウエル灌漑(掘り抜き井戸を掘って動力ポンプで地下水をくみ上げる方式)と呼ばれています。本灌漑方式で生産力が向上した背後で、地下水の低下や塩害が発生、とくに深刻化しているのは過剰揚水による地下水の低下とも言われています(調査と研究 京都大学 第18号より)。日本米の栽培に当たっての留意すべき点でしょう。また、おいしい日本米を作る上では稲わらなどの有機物の還元で地力を高めることも必要でしょう(現地では稲わらが田んぼに還元されることはない)。半乾燥地ハリアナでの日本米づくりは緒についたばかり、クリアする多くのハードルが待ち構えています。

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2月15日に送られてきた苗の生育  
 

2018年2月14日 13:26