「この指とまれ」、今年の米づくりをふり返って

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 クリスマス寒波の到来で、アスク試験田は一面雪に覆われ、ひっそりと来年の春を待っています。
 本年、アスク試験田の周辺の田んぼ12haで酒造好適米「羽州誉」、「龍の落とし子」、「酒未来」、「山酒4号(玉苗)」が、作られました。
 酒米づくりに汗を流しているのが、23年収量.jpg
若い担い手山口泰弘・平吹正直の両君を中心とする「この指とまれ」の面々です。
その活動については、本ブログでもたびたび紹介しています。
 グループがモットーとしているのが蔵元から信頼される高品質米 ”2.1mmのふるいで選別した大粒の米”、そして、施肥量を控え目にした”低タンパクの米”、を作ることです。平成17年から酒米づくりに取り組み、その成果は年々高まっています。
 それでは、グループの23年の作柄はどうだったでしょうか。一言でいえば”悔いを残した”と言えるでしょう。それは、7月19~21日にかけて吹走した強いダシ風に手をこまねいたことにあります。ダシ風によって葉色は著しく褪色し、田んぼには一足早く秋が訪れたようでした。この時期は穂が出る10~15日前、稲の成長にとってもっとも大事な穂孕期、花粉の形成やもみが大きく成長するときなのです。葉色は10日ほどで回復したものの、”もみ”が小さくなるのではという懸念はありました。
 通常、葉色が褪色し稲が弱ったとき、窒素肥料の施用で早期に回復させることができます。もみの大きさにもプラスします。半面、穂孕期の追肥は玄米のタンパク質含量を確実に高めてしまいます。”追肥をすべきか”、グループは低タンパク米を作ることを優先しました。
 そして、米の調製では2.1mmか2.0mmか、使用する網目の判断にも迷いました。でも、これまでどおり2.1mmで選別し、大粒の米をつくることにしました。
 その結果は?、上の表に示した数字が如実に語っています。2.1mm以上の上米率が低く、とくに、早生品種で、千粒重26gほどの羽州誉、龍の落とし子は極端に低下しました。ふるいを通さない粗玄米の収量は21年産よりは多いにもかかわらず、上米収量は100kgも落ち込んだのです。高品質米にこだわり続けた結果でした。唯一の救いは、玄米タンパク質含量は例年よりは低く、7%を確保したことです。
 もし、あの時少量でもよい、追肥をすることで極端な収量低下は防げたのでないか。医者が患者の病状を
診断し処方する、米づくりもまた同じように、千変万化する天気を見ながら、そして稲の成長を診ながら、適切な対応を講じていく、その大切さを、「この指とまれ」の若い担い手たちは今年の酒米づくりから学んだのではないでしょうか。
 来年は辰年、「飛竜乗雲」、勢いのある酒米づくりを目指して、「この指とまれ」のさらなる活動に期待したい。                   
    
     本沢品質.jpg

2011年12月29日 11:22